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『PSYCHO-PASS ASYLUM 1 』 『PSYCHO-PASS サイコパス 追跡者 縢秀星』感想 [PSYCHO-PASS サイコパス]

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サイコパスのスピンアウト小説、『PSYCHO-PASS ASYLUM 1 (ハヤカワ文庫JA) 』と『PSYCHO-PASS サイコパス 追跡者 縢秀星(マックガーデン)』の感想です。

両方とも発売日に購入し、「2」の放送前には読もうと思っていたのですが、仕事が忙しかったり、腕を骨折したりと、かなり先送りになっておりました。

正直、どちらも面白かったです!

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『PSYCHO-PASS ASYLUM 1』は、SFマガジンに短期集中連載されているサイコパス・スピンアウト小説の「チェ・グソン編 無窮花(ムグンファ)」と「縢秀星編 レストラン・ド・カンパーニュ」をまとめたもの。

SFマガジンも購読してるのですが、「チェ・グソン編」が2014年8月号に掲載されたおり、「これはまとめて読みたい」と思い、単行本化まで待っていました。


というのも、SFマガジンの連載は上下二段にレイアウトされており、私はこのレイアウトが少々苦手。どうしても視線が逆Z字に移動することや視界に上下段どちらかの文字の群れが集中力を殺いでしまうのです。

そんなこと言っていたらSFマガジンの掲載内容のほとんどは読めないのですが、集中したい作品であればあるほど、このレイアウトが気になってしまうから仕方がない。


さて、その内容ですが、ネタバレになることは一切避けます。
とても面白い小説なので、実際に読まれることを強くオススメします。

このスピンアウト小説はサイコパスの世界観をより深く理解しようとするのに、かなり重要な要素を含んでいます。

特に「チェ・グソン編」で描かれた日本の外の様子は、思いの外混沌としています。
設定上は国家としてかろうじて存在しているはずの隣国・朝鮮がどんな国であるか? そして世界がどんな状態なのか?

アニメの中では多くを語る必要のなかった膨大な世界観設定を、チェ・グソンの生い立ちを知る物語の中で見事に解説してくれています。


正直なところ、キャラクターとしてのグソンにはあまり興味がなく、カルト的に槙島を指示する愉快犯くらいにしか思っていませんでした。

彼の行動原理を理解しようなどとは思ってもいなかったし、悪い言い方ですが、純日本人で潜在犯の朝鮮人という設定で何かを納得してしまっていたのです。


ところがドッコイ___、これは偏見以外の何物でもなかった。空想上の人物とはいえ、素直に反省します。

チェ・グソン、イイよ! 彼は実に面白いキャラクターだ!
こんなにも彼が荷物を背負い込んだ、生きたキャラクターだったなんて、全く想像もしていなかった。

実際のところ、彼の生い立ちの設定が「1」製作時にここまで詳細に立てられていたとはとても思えないし、おそらくスピンアウト小説を書くにあたって後付された設定も多いのであろうとは思う。

しかし、この彼の物語で語られる「どうしようもない世界」とそこで生きる「単純に幸せになりたい人々」の苦悩は、「チェ・グソン編」というスピンアウト小説の1篇に留めておくにはあまりにも大きなテーマで、これこそがサイコパスの描きたかった世界なのではないのかという気持ちにさせられる。


情景描写、心理描写も細かく描かれているし、それでいて回りくどくなく、リズミカルに読める文体は小説を読んでいるという行為そのものにも満足感が得られる。
「作品に浸っている感覚」が心地よい。

この「チェ・グソン編」だけでこの本を買う価値があるし、どうして「チェ・グソン編」が最初なのかという意味もすぐに理解できると思う。


ただし、一つ重要な注意。
かなり刺激的な内容ですので、中高生にはオススメできません。R15どころかR18指定を受けてもおかしくありません。倫理的に映像化不可能です。

もし購読するのであれば、それなりに覚悟してください。



次に「縢秀星編 レストラン・ド・カンパーニュ」。
「チェ・グソン編」とは打って変わって、こちらは健全。
5歳からの潜在犯であり、隔離施設で育ったはずの縢が、如何にしてその趣味の1つである「料理」と出会ったのか。

そのきっかけとなる、縢がまだ執行官になって間もない頃の「とある事件」が物語の舞台。

鎖国状態である日本の食糧自給を支えるハイパーオーツに絡んだ、これもまたサイコパスの世界観を深く知る上で重要なファクター。


食糧自給問題に関してはアニメでも槙島のバイオテロで一通りの解説は成されているものの、それによって人々の食生活の変化、とりわけ科学的(論理的)に、また感覚的にどういった意味付けが食事に成されているのかという部分については、あまり細かな描写はなかったように思います。

この市民にとっての食事のあり方を描くことによって、槙島のバイオテロの脅威はより深い意味を持ち、シビュラシステム運営の1つの歪みみたいなものを垣間見ることが出来ます。

また、縢自身の物語としても、『PSYCHO-PASS サイコパス 追跡者 縢秀星』と合わせて読むことで、彼の人生のターニングポイントをかなり押さえられるはずです。

プラス、小説版『PSYCHO-PASS サイコパス (上)』 のボーナストラック「たまには色相の濁らない一日」も読んでおくといいでしょう。

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さて、その『PSYCHO-PASS サイコパス 追跡者 縢秀星』。
『PSYCHO-PASS ASYLUM 1』の「縢秀星編 レストラン・ド・カンパーニュ」が縢の趣味の1つである「料理編」であったのに対し、こちらはもうひとつの趣味である「ゲーム」を題材にした物語。

文体も『PSYCHO-PASS ASYLUM 1』に比べると言い回しが素直だし、レイアウトも余白が十分取られているので非常に読み易い。

『PSYCHO-PASS ASYLUM 1と異なり挿絵もあるせいか、AVGのテキストを読んでいるようなライトな印象で、かなりサクサク読み進められる。

各章の関連性が「逆転裁判」的に後続する章にリンクする構成で、いかにもゲームシナリオラーターが書いた小説って感じ。

だが、その肝心ののりしろ部分の具体性に乏しく、縢のバックボーンを太くするという意味合いでは、ちょっと物足りない印象。

このモヤモヤが縢がその最後に感じていたものだったのかもしれないが、外側から見ている立場としては、もう少しスッキリさせていただきたかったかな。

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この2冊は出版社は異なるものの、スピンオフ小説としての整合性をキチンと付けているし、こと縢秀星に関しては両方読まないと面白味が半減してしまう。
2冊をワンセットで、シビュラの神託によってもたらされる人間の数奇な運命の1つを楽しめる作品だと思う。

特に縢の最後の言葉である「やってらんねーよ、クソが」と最後の微笑み__。
この意味は『PSYCHO-PASS ASYLUM 1』で肉付けられた「社会に残せる生きた証」を彼が獲得したことを知っているか・いないかによって、後味が全然違って来る。

縢は最期には受け入れたんだと思いたいんだよね。




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